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お嬢さんは幼稚園の先生だった(第76日)

きみは愛されるため生まれた

10月20日(金)晴れ

 ■朝食前の、庭掃き

 御住職は午前7時前には既に起き上がり、朝のお勤めをされていた。木魚と鐘の音の調子良い響きが床に寝転がったままでいる部屋にまで聞えて来たが、直ぐ終ってしまった。いつ起き上がろうかと迷っていると、住職の声が掛かった。

 「8時からお客さんが来るので起きなさい」

 親に注意されたかのごとく、勢い良く飛び起き上がり、そのまま急いで床を畳む。

 着替えを済ませ、畳の上に胡坐を掻いて腰を降ろす。これから自分はどうしよう、と頭の中で模索する。腰を降ろしていても何故か、身の置場が定まらない。

 程なく娘さんが台所から朝食の用意をお盆に乗せて姿を現した。次は食事をすることだ、と思いきやご住職、自分一人だけで外へと出て行く。

 「食前の運動に、庭を掃いて来る」

 そうだ、昨晩の約束を思い出した。遅れては一大事といった風に後から住職に続く。

 広い境内を竹箒で掃く。約一時間掛かって綺麗に掃き清めた。霧が掛かっていたので、これは雨にでもなるかなと心配したが、そうとは限らないよと教えられ一安心。




 庭を掃いていると、一人で、また二、三人でお母さんに連れられて、またはタクシーで乗り付けてくる。水色の、さっぱりとした制服を着た子供達が続々と、朝の挨拶をしながらお寺の建物の中に入って行く。

 「先生、おはよう御座います」

 「先生、おはよう御座います」

 このお寺は幼稚園もやっているのだ。そして、こちらのお嬢さんが幼稚園の先生、保母さんなのだ。この朝、この時になるまで知らなかった。

 朝食の用意を持って来た時に、そのことに言及すると笑って軽く受け流したが、何となくおしとやかで遠慮がちな物腰であった。



 御預けの朝食は庭掃除が終って直ぐ、午前9時から住職と二人で取った。隣の部屋は子供達のはしゃぐ音で喧しい。

 「一杯食べなさい」

 そう勧めてくれたがお代わりの度にお茶碗を手渡すのがどうも気が引ける。大食漢であったから、もしその食欲にブレーキが掛けられていなかったら、どうなっていたことだろう。御住職、びっくりして腰でも抜かしてしまっていたかもしれない。

 朝食の献立:菊の漬物、白菜、大根の漬物、納豆、ワカメと豆腐の味噌汁、もちろん、ご飯



 午前10時になるかならない頃、お客さんが一人来られて、ちょうど僕の隣に腰を降ろす。昨晩の、新任のおまわりさんのことを思い出した。もう自分も出掛ける潮時だと思い、住職に挨拶をして外へと出る。

「色々とありがとう御座いました。奥さん、お嬢さんにも宜しくお伝え下さい」

 頂いたリンゴ2個とボーロ菓子をリュックに詰めた。



 出発しようと掃き清められた庭を横切って歩いて行こうとすると、後方、窓を開けて、身を乗り出すようにしてお嬢さん、声を掛けてくれる。

 「お気を付けて! お元気で!」

 旅人は振り向いて笑顔で手を振る。円満な気持ちで円満寺を後にした。


 お世話になった新庄の街から去り難いのだろうか。午前10時5分に新庄駅前に着き、観光案内所へ行ってはパンフレットを貰い、何だかんだの準備で午前11時半に駅前を出て、漸く街を出たのが正午ちょうど。

下町マドンナ食堂未亡人細腕繁盛記

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