ＹＨ会員証再発行を求めて、方向転換、太平洋沿岸の陸前高田へ行こう！（第７２日）

１９××年１０月１６日（月）晴れ


■朝の鬱積気分を晴らしたい

　ＹＨの正式会員としては泊れなかった。それが頭の中には未解決な問題の如く残っていた。その所為か今朝の寝起きも何となく良くなかった。午前６時１０分、起床。

　朝食後、朝の清清しさを求めてＹＨ前の庭園に散歩のつもりで出歩いて行った。沈鬱な顔色であったに違いない。そんな面をぶら下げながら池をゆっくりと一周していた。外では誰とも会わなかった。日本の風流を理解するといった気分でもない。霧が掛かっていて、今日の天気が気懸りだ。 　　　　　　　　　　　　　



　こんな沈んだ気分で旅を続けるのは嫌だ。この晴れない心の中、天気が晴れれば心の中も晴れてくるのだがと思い続けていたところ、歩きながら閃いた。

　そうだ、毛越寺に泊ったという証拠の記念スタンプだけでも貰っておこう。

　そんな思い付きに促されて、受付に少し元気になって戻って行った。受付でよくよく話しを聞いてみると、会員証は毎年スタンプを変え、その度に会員料金を支払わなければならないとのこと。会員証の発行は直営のＹＨ、例えば岩手県では陸前高田のＹＨでも発行している。

　「行って申請すれば、その場で直ぐ発行して貰えるのですか？」

　「そうだよ」

　それならば、今日は陸前高田の方、太平洋沿岸へとコースを取って行こう。

　実は一ノ関（イチノセキ）から先はどういうコースを取ろうか思案していた。ハッキリと決められず、とにかく一ノ関まで行ってからにしようと心に決めていたので、これで今日のコースも難なく決まった。新しい会員証を貰いに行くという立派な口実が見つかった。

　陸前高田には良い思い出がある。北海道へと向かう途上、夏の盛りに一度訪れ、ＹＨ内での朝食が実に美味かったことで印象深い。夜のミーティングでは、ホステラーの皆さん、仲良くなりましょうという儀式のごときもの、お互いにぶつかったり擦れ合ったりのゲームもまた楽しかった。

　また行けば、あの、美味い朝食が食べられる、元気になれる、気分も回復、良くなれるかも―――そんな期待感もあって、行く前からもう何となく気分も浮き浮き、曇りがちだった目の上が晴れ渡ってくるの感じ始めていた。心は平泉にはなく、もう気仙沼の方へと移っていた。



　ＹＨを出発する頃には霧も取れて、晴れ間が見え出した。

　「晴れて良かったねえ」と寺の女の人。

　「ええ、本当ですね」 素直に応答が出来ている。


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