毛越寺ＹＨに会員証なしの、準会員として泊まった、そして７０才の旅人との邂逅（第７１日、つづき）

１９××年１０月１５日（日）晴れ


■会員証なしの、ＹＨ宿泊■

午後４時、ＹＨに着く。

「会員証を紛失してしまったが、泊めさせて貰えますか？」

泊められるが、料金は準会員並みで、一泊二食で１０００円とのこと。会員は７００円。オレは会員ではないのか！？　会員証がなければ、いくら昨日紛失したからと言っても会員として認められない、会員として泊められない、との受付の応対。

暫し迷った。ここまで来て、出て行くのも何だし、仕方ない、その準会員の料金で泊ることに決めた。

しかし、何となく腑に落ちない。会員として当然泊れると思っていたのに、期待に反して駄目だということで、金輪際、もうＹＨには泊らないぞ、これからは野宿一本で通して行こう！　そんな風にちょっと自棄になって決心してしまった。

夕食が終って部屋に戻ってからも同室の人とは実のある話し合いもせず、溜まった旅日記を黙りこくって書き続けていた。




■御老人、若い頃の決心を実行中■

関西からやって来られたという、７０才を過ぎた御老人が同じ部屋に入って来た。気楽に話し掛けてくる。一人旅をやっていると仰る。年を取ってから旅をするため、若い時分に少しずつ貯金をしていたのだそうだ。

今はこうして年を取ってしまった。若いころからの夢、それをこうして実行中なのだ、と。年を取ったときに何をするか既に若いときに決めていたとは。その長期的な展望をずっと持ち続けながら、こうして今実行している。感心していた。

翻ってこのオレには長期的な展望があるのか、と聞かれれば答えられない。明日は明日の風が吹く、将来どうなるかわからない、そんな風に答えるしかない。ケセラセラ。


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