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雫石、盛岡市内、そして盛岡公園へと移動した(第69日、つづき3)

19××年10月13日(金)雨後曇り


 ■盛岡市内に入った

 雫石を通過し、盛岡市に入ったのは午後2時15分であった。市内に入ってから、その方向音痴の程は大したものであった。盛岡公園へと行こうとするのだが、どの道路を経由して行ったら良いのか、地図を片手に少し行っては止まり地図とのにらめっこ、少し行ってはまたにらめっこ。

 午後4時近くになって、ようやく川沿いに見えた芝生が目指す公園に違いないと自分なりに納得する。公園内のベンチに腰掛け、さて、今晩は何処ら辺で泊ろうかと思案する。もちろん野宿のことだ。

 前方、川を挟んで盛岡郵便局など市の街並みが見える。公園の左手はホテルかと見間違えてしまった。県立図書館であった。後方、子供達が遊ぶ声が聞えてくる。



 ■夜の盛岡公園

 いい加減ベンチに腰掛けていた。その間、ひっきりなしに手が動いていた。紙袋の中に入ったビスケットに伸び、一つ取り出しては口へと入れ、そんな繰り返しを繰り返しながら腹に充分入ったと思われた頃、腰掛けている辺りは薄暗く、何となく肌寒さを感じる時刻、夕刻となった。

 後方の茂みへと移動する。盛岡城址とはこちら側にあったということを知る。石川啄木の碑、城の石壁などが見られる。ここからは盛岡の中心街、その大通りだろうか、見える。ビルからの照明が明るく、ここに立って向こう側を見ていると、向こう側からもここに人が立って見ているのが直ぐ分かるだろう。観光客もその辺を歩いている。街の中の公園だから誰でも立寄れる。

 屋根のかかった東屋の下、両側に竹製と思われたベンチが取り付けられている。誰か一人がそこに座っている。今晩はそこのベンチの上で寝ようと心に決める。その誰か一人が何処かへと行ってしまうまで何処かその辺で時間を潰そう。そう思って一つ下の広場にやって来る。

 ベンチに腰掛けていると、既にその広場で時間を潰していたらしい関西からの女の子二人が歩み寄って来て、話し掛ける。

「日本一周ですか?」

 自転車の後に日本一周と書いてあるのが読めたのだろう。今晩、上野を経由して帰るのだそうだ。一週間の東北旅行。汽車の時間が来るまでここで過ごしている。午後5時頃、彼女たちは去った。

 さて、そろそろ寝ようか。さっきの決めた場所に来て見るとまだ例の人がいる。その誰かさんは相変わらず腰掛けたまま、動こうとしないようだ。その人に構わず自転車を東屋の下に引っ張って来る。寝袋を引き出し、寝る態勢を整える。

 午後6時頃、寝袋の中に入る。が、どうも寝付けない。意識は寝入っているようでいて寝ていないのだ。隣に座っていた人はもう帰ったのかな。そう思い込んでいた。

 人の足音が近付く。目が冴えてしまう。その足音がここへとやって来るのだ。そして、空いている、隣の、反対側のベンチに腰掛ける。その人のことが気に掛からないといえば嘘になる。

 お互いに存在を感じ合いながらも無言の世界が漂う。その人が何かをしでかすのではないのかと、頭から被った寝袋の中、ちょっと不安だ。早く行ってしまえば良いのに、と思っている。




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日本一周ひとり旅 300日間のキセキ の雫石、盛岡市内、そして盛岡公園へと移動した(第69日、つづき3)のリンクについて

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