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北海道と東北との間にあって(第50日)

19××年9月24日(日)雨後曇り、後小雨 


■小雨振る夜道を辛く歩いていた

 心の整理も出来たのか、北海道一周の旅も正に終わろうとしていた。そしてこの気ままな一人旅、これから東北地方一周へと継がれようとしていた。

 この終りとこれからの始まりとの橋渡しを意味するかのような出来事、それは北海道一周の旅に有終の美を飾りることになった。新たな境地、 可能性を求めての、これから始まる「はじめての東北一周ひとり旅」への象徴的な“事件“であった。

 まさかこんな事が起こるとは思ってもいなかった。尤も、そんな話を聞いたことはあった。まさか自分にも起こるとは――驚きであった。感動的であった。



 ■何故か、辛い

 その日、夜の6時過ぎ、暗い雨が降り続いていた。小雨パラパラと降る中、まるでその雨に背後から追われているかのような急ぎ足、殆ど駆け足に近い、どこか寝るのに適当な場所はないものかと思い続けながら、重いリュックサックを背負った一人のヒッチハイカー、国道279号線沿いを忙しくも焦って歩いていた。

 はじめのうち、暗い夜道を歩きながらの、夜間のヒッチハイク、どこまでできるものなのか、ちょっと実験してみようと、そんな景気の良いことも考えていた。

 ひょいと目を脇に逸らせば真っ暗。そんな夜の空の下、寂しそうな沿道の街燈の光だけがやたら痛く目に飛び込んでくる。まるで暗闇の中を不安そうに手探りで突き進んでゆくかの自分一人。

 子供の頃の思い出が、しかも辛い思いが重なり合ってしまっていたのだろうか。大人になっても子供の頃の記憶が同じような状況に身を置いたためか、それが蘇えってきたのか。

 子供ながら怖い夜道を一人で歩いていた。何をしていたのか、親のお手伝いだったのか、親に叱られた幼い子は行き場を失い、家にも帰れない、仕方なく夜道を彷徨っていたのか、良くは覚えていない。

 今、こうして夜道を歩きながら、何故か、辛いと感じている、思っている。どうして、こんな辛い思いをしなければならないのか。どうしてこうも辛い思いが出てくるのか。



 北海道を回ってきて、また本州に戻って来た。ここ下北半島に辿り着いて、どうして突然、こんな辛い思いを持つのか。自分でも良く分からない。夜に突入して、いまだ寝場所が定まっていない、そんな焦燥感に駆られていたからか。

 どうしてか? 

 どうしてなのだろう? 

 何度も何度もこの質問を、誰かにぶつけるということでもなかったが、この質問を呪文のように繰り返していた。心の中にふつふつと、

 どうして? 

 どうして? 

 涌いて来る。湧いてくる。


 歩き続けていても到達する所が見出せないでいる。だから焦燥感が募る。

 どこに辿り着くのか、

 どこに辿り着く積もりでいるのか、

 どこに辿り着きたいと思っているのか。

 早く何処かに、何処でも良い、早く体を横にしたい。疲れた。


 この焦燥感、それが昂じて辛い、辛いと思い込まされているのか、どうなのか。

 暗いから良く見えない。どこに寝場所が見出せるのか。目があっても目には見えないに等しい。


 辛いことは北海道で終わったのではなかったか。それともまだ終わってはいないのか? それがまだ続くと言うのか。

 そんなに辛い思いを抱きながら、歩いて行く。

 何処へ、か。

 決まっていない。まだ、決まらない。

 探している。

 でもどこにあるのかは知らない。だから探すしかない。
今晩の宿を求めている。どこにあるのか。

 どこへ行こうともこひ自分と一緒だ。辛い、と感じている。

  何故に、何故に、夜も既にやって来てしまっているのに、それでもまだ外で、とぼとぼと歩いている。小雨振る中、濡れるに任せている。

 どこかに留まりたい。

 休みたい。


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